コニー・ウィリスの『ドゥームズデイ・ブック』に、主人公がこんなことを考える場面がある。
時は中世のとある村。ペストが持ち込まれて人々が死んでいく中、ひとりの神父が彼らを救うために単身奮闘し、その果てに、自らもペストに感染して無惨な死を遂げる。
一方で、同じ村の貴族の屋敷で働く臆病で怠け者の召使いは、続出する病人と死人に怖じ気づき、早々に逃げ出して行方をくらます。
こうやって、勇気と正しい心を持つ人は、それゆえに自らを危険にさらしてこの世から消え、一方、使用人のような者はそれゆえに自らの安寧だけを図って生き延び、子孫を増やす。そして、次の世を作っていく。
板橋で、頭のおかしい自殺志願女を救おうとして電車にはねられた警官が、本日亡くなったと聞いて、なんとなく思い出した話。
コンパクトになっているブロッサム、通称ちびころ。