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CREGUEAN#4 "Lost Planets" Private Reaction2
ちょっとした出来事



 ……大抵の場合、司令部の参謀は一緒に夕食をとる。普段はテレシコフ中将を筆頭とする第11艦隊のメンツのみであるが、たまに皇太子レフォルトが同席することもある。
 これはそんな「ちょっと特別な日」の出来事である。


 サラダをつつきながら、シウリエン・ネイスミスは何気なくレフォルトのほうを見やった。最近彼女はよくそうやってこっそり司令官を眺めている。いい歳をして何やってるんだろうという気も実はしないでもないが、なにしろ上将であるレフォルトと上尉でしかないシウリエンとの間には多くの階級が挟まれているから、用もないのに話しかけたりするのはやはりなんだかためらわれるのだ。用もないのに見ているというのもちょっととは思うが、気付かれなければ別にいいんだもんね、と自分を納得させている。
 そんな訳で、いつもならちらりと盗み見するだけのシウリエンの視線が、この時に限ってふと止まってしまった。
「……?」
 彼女と同じく、レフォルトもサラダをつついていた。しかしフォークの動きがなんとなく妙である。何かをより分けているようにも見える。
〈なにをしているのかしら?〉
 シウリエンの他には気付いた者はどうやらいない。怪訝に思いながら、彼女は密かに彼の手元を観察した。
「……??」
 サラダには、彩りもかねて紫色のタマネギが入っている。どうやらレフォルトはそれを器用により分けてはわきへのけているようだった。何のためにそんなことをしているんだろう、とシウリエンは内心首をかしげ、もっと良く見ようと少しのりだした。
 その瞬間、レフォルトがふと眼を上げた。丁度首をのばしたシウリエンともろに視線がぶつかる。とたんにフォークを持ったレフォルトの手が空中でぴたりと止まり、一瞬おいて困ったなという表情が黒い瞳に浮かんだ。
〈う……〉
 もしかすると見てはいけない物を見てしまったのかもしれないと、シウリエンは思った。だがしかしここで下をむいていきなり食事に専念し始めるのも白々しすぎる。なによりそっぽを向いたりしたら何か誤解をされるかもしれない。ところが迷っているうちに今度は眼をそらすタイミングを完全に失ってしまった。
〈ど、どうしよう……〉
 進退極まったあげくの妙な見つめあいは1、2秒続いただろうか。やがてレフォルトはなにげにサラダへ眼を落とすと、のけていたタマネギをもといた所に戻した。そのまま何事もなかったかのようにまじめくさった表情で口に運ぶ。その姿からすべてを悟ったシウリエンは吹き出しかけ、あわててうつむいた。
「どうかしたの?」
 隣の席のパステルナーク少佐が不審そうに声をかけてくる。顔を伏せたままシウリエンは首をふった。
「いえ……なんでもないの」
 やっとのことでそれだけ言うと、中断していた食事を再開する。今見たことを話してもパステルナークは信じないだろうし、なんと言っても眼を上げた瞬間、シウリエンには笑いださないでいる自信がなかったからである。



用語解説

大抵の場合、司令部の参謀は〜……いわゆるディナーという奴。オルラント帝国軍は礼節を重んじる格式ある軍隊なのである。

テレシコフ中将……パトリケイ・テレシコフ中将。常備軍第11艦隊司令官。シウリエンの上司。

皇太子……ニコライ・オルラント。14歳の素直でけなげな美(かどうかは知らないが)少年。一応、遠征軍の司令官ということになっているが、名目だけというのは誰が見てもバレバレである。プレイヤー間では「ニコライくん」と呼ばれていた。

レフォルト……ルカー・レフォルト上将。28歳。近衛第2艦隊司令官で遠征艦隊(遠征“軍”ではない。微妙微妙)司令官。ヤ○・○ェンリーではあるまいし、この年齢で艦隊司令官というのはどう考えてもおかしいと思っていたら、やっぱり秘密を持っていた。後のシウリエンの夫。
 ちなみに、上将とは大将の上で元帥の下の階級である。

上尉……大尉の上で少佐の下。

その姿からすべてを〜……リアクション中で、ニンジンの嫌いな皇太子ニコライくんが「レフォルトだってタマネギが嫌いだ」と指摘する場面があった。このプラリアはそれから思いついて書いたもの。
 まあ、皇太子であろうと司令官であろうと、好き嫌いはありますわな。

パステルナーク……ナージェジダ・パステルナーク少佐。シウリエンの同僚。他プレイヤーさんのPCだった。
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