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女の子のための軍事シナリオ講座

 軍事シナリオが一般のプレイヤーから見ると敷居が高い理由のひとつに、「特殊な知識が必要になるから」というのがあるようです。
 ですが、知識が必要になるというのは、どんなタイプのシナリオでも同じです。軍事シナリオがことさら特別のように思われているのは、やはり、もともとマニアやオタクの参加者が多く、他のシナリオのように、マスターがリアクション上でプレイヤーの知識不足をフォローすることが少なかったからでしょう。
 ですが最近、それも変わってきているようです。
 戦争物といえば銀英伝とか? などという人が気軽に参加してくるようになり、名簿には女性プレイヤーの名前もちらほら見かけるようになっています。かくいうわたしもそのひとりです。
 そこで今回は、そういった“ライト系”の女性プレイヤーのために、軍事シナリオの遊びかたをちょっと書いてみることにしました。
 もちろん、わたしの経験の中でのものなので、万人に通用する訳ではありませんが、「軍人をやってみたいんだけど……」と悩む女性プレイヤーの判断の一助になれば幸いです。
 なお、今回扱っているのは、いわゆる「近代の軍隊」です。軍事シナリオには騎士団とかが主人公のものもありますが、それについては割愛しています。

1.戦争シナリオは2種類 / 2.戦闘に従事する人たちについて / 3.実際のアクションについて /
 4.男性プレイヤーとのつきあいかた / おまけ・エセ「大物プレイヤー」にご注意


1.戦争シナリオは2種類

 軍事シナリオは、大きく分けると「戦術シナリオ」と「戦略シナリオ」のふたつになります。
 戦術シナリオで扱うのは「みんなの知ってる戦場」です。生きるか死ぬかの戦争の中で、武器を持って敵と戦うか、補給や輸送など後方支援として前線をサポートするのが主な行動になります。
 戦術シナリオの特徴は、末端の一兵士から将官まで、幅広い階級で参加できる間口の広さです。また、職業も、指揮官を含む戦闘部隊から偵察、補給部隊、果ては白衣の天使まで、およそ戦場といえば思いつくものには(ゲーム内でOKされているものであれば)大抵なることができます。
 他方、戦略シナリオは、戦争全体を進めていく話です。PCは直接戦闘に参加することはあまりせず、司令部とか作戦本部とかいう場所で、個々の戦場の様子を見ながら、どうすれば国家として勝てるかを総合的に考えていきます。
 戦略シナリオでは、PCは参謀と呼ばれる役職に就くことが多くなります。参謀とは、司令官(司令部)をサポートするスタッフです。各戦場からの報告を分析し、資料や情報を調べ、司令官や上官(大抵NPC)にアドバイスをしたり、次に行う作戦計画を作って提出したりします。言ってみれば「縁の下の力持ち」です。
 ただし、参謀には指揮権──実際に部隊を指揮する権限がありません。参謀にできるのは、あくまで上官に対して「こんなん作ってみましたがどうでっか」と意見を言うことだけになります。ただ、戦略シナリオでは、その相手が戦争の行方を左右する決断のできる強い立場の人物になります。なので、結果として大きなことができるわけです。
 もちろん、参謀としてでなく、国家の軍全てを束ねる司令官、または国家元首そのものとして戦争の采配を振るうこともゲームによっては可能です。

 戦術シナリオと戦略シナリオ。どういう遊びかたをしたいのかによって、どちらを選択するかが決まってきます。
 いわゆる「戦場での人間ドラマ」をやりたいのなら、戦術シナリオがお勧めです。戦略シナリオの場合、戦争を進めることそのものを楽しむ傾向が強くなるため、PCの人間性やそれから生まれるドラマを描くことはどうしても二の次になります。また、扱うものごとの規模が大きくなるので、ひとりのPCがカバーしなくてはならない問題が多くなり、個人的なことまでアクションに書ききれなくなりがちなのです。
 その点、戦術シナリオは、個人の役割は比較的限定されているため、それ以外の“遊び”を入れやすくなります。それに、戦術シナリオの場合、戦場ドラマを描くことそのものがシナリオの目的のひとつとなっている場合も多いので、マスターのほうでも割と積極的に盛り上げる工夫をしてくれます。
 もし、大きな視点から戦争を動かしたいとか、歴史を自分の手で作りたいと思う場合は、戦略シナリオが良いでしょう。戦略シナリオで扱うのは主に国家規模の作戦や方針になりますから、かけるアクションも自然と戦争そのものを左右するものになります。自分のアクションが歴史を動かすという楽しみ(と責任)は戦略シナリオならではのものです。

 もちろん、どちらにも欠点……というか、それなりに覚悟が必要な部分はあります。
 戦術級シナリオを遊ぶ場合、やはり最低限の戦術知識と、歴史上有名な戦闘や作戦、または武器兵器については知っておく必要があります。
 戦闘には、将棋やチェスのように「こういう時勝つためにはこう動く」「敵がこう来たらこちらはこう行動すれば負けない」というセオリーがあります。そのセオリーがいわゆる「戦術」です。
 そして、やはり将棋やチェスと同じく、セオリーをたくさん知っているほうが、戦う際の選択肢が増えて有利になるのです。それだけでなく、敵がなにを期待してこういう方法で攻撃してくるのかを見破り、裏をかくこともできます。逆に言えば、セオリーを知らないでただやみくもに行動をしても、勝つのは難しいのです。
 また、大体の場合、シナリオ上で行われる戦闘は、過去に実際にあった戦闘や作戦がモデルになっています。すでにいちど結果が出ているものですから、どういう条件が勝ちにつながったか、負けの原因になったかということがはっきりしています。つまり、アクションを書く時に重要なポイントが分かるわけです。
 もちろん、そんなこととは無関係に、戦場が織りなす人間ドラマの機微を楽しむというやりかたはあります。というか、女性プレイヤーの場合、多分こっちのほうをやりたい人のほうが多いと思います。もちろん、それも悪い事ではありません。
 ただ、マスターの中には、戦術シナリオとは純粋に戦争ごっこを楽しむものであり、人間ドラマは刺身のツマ、という考えの人もいます。それでなくても、リアクションの制限枚数が少ない場合、次回へのヒントや情報を提示する意味からも、描写は戦闘の推移に多く割かれ、人間ドラマは二の次になってしまうこともないわけではありません。なのでやはり、人間ドラマオンリーよりは、多少勉強して戦闘部分にも関われるようにしておいたほうがつぶしがきくことでしょう。

 一方の戦略級の場合、戦術級ほどの専門知識は必要ではありません。ぶっちゃけた話、現代の政治や世界情勢の中から、良いところを真似し、悪いところは反面教師にしていけば、なんとかなってしまうくらいです。一般的に、戦略級は戦術級に比べてアクションが難しいと思われがちですが、実は、初心者にとっては戦略級のほうがある意味ずっと簡単です。
 ただ、戦術級に比べて遙かに広い視野を要求されます。たとえば、外交です。
 戦争なんて、無関係の第三国にとっては、ただの迷惑か儲けるチャンスかのどっちかでしかありません。支援を断られたり、逆にいらんちょっかいをかけてきたり、いろいろな形での干渉があります。これをうまくあしらっていくにはどうしたらいいか、なんてことを考えなくてはならなくなります。
 そのほか、国内世論、物資の流通、社会情勢……戦略級では戦術級のように、単に「戦闘で勝てばいい」というだけにとどまらない判断が要求されます。
 そして、判断には情報が必要です。最近では、自分が所属するリアクションさえ見れば大体のことは分かるようになってきましたが、場合によっては、関連する全ての場所のリアクションを集め、読み比べてみなくてはならないなんてこともあります。これがかなりの負担になる可能性は否定できません。
 また、これはロールプレイの話ですが……時には、戦術級では負けることが大局的に見ると自分たちにとっては都合がいい、なんてことも起こります。基本的に我々は「兵士を無為に死なせないのが良い司令官」という意識を持っていますが、国にとっては「兵士を見殺しにすること」が良い結果に結びつくこともあるのです。こんな場合、一体どうしたらいいのか……こういったつらい決断をしなくてはならないのも戦略級です。


2.戦闘に従事する人たちについて

 参加するシナリオが決まったら、どういうPCを作るかを考えましょう。
 集団戦を基本とする軍隊の構成は、大体どこでも同じようなものになります。
 まず、最前線で戦う「兵士」です。彼らは数人程度のグループを組んで行動することが多いです。そのグループをまとめるのが「下士官(伍長、軍曹、曹長など)」になります。
 いくつかの「兵士+下士官」のグループを取りまとめて指揮統率するのが「士官」です。ただ、ひとくちに士官といっても、階級によって統率するグループ数や人数は大幅に異なります。士官でも下の方の「尉官(少尉、中尉、大尉など)」が率いるのは、数十人から数百人程度、そのひとつ上の「佐官(少佐、中佐、大佐など)」だと、数百人から千人程度。さらに上の「将官(少将、中将、大将など)」になると、数千人から数万人に対して責任を持つことになります。
 多分、軍人PCを作ろうと思う時にいちばん悩むのが「どんな階級にするか?」ということでしょう。マスターまかせにするのならいいですが、自分で「これをやりたい」というのがある場合、年齢や経歴などをどう設定しておけばいいのか迷うかと思います。
 これらの区別は、基本的には以下のようになっています。

・兵士
 いわゆる「下っぱ」です。最前線で指揮官に従って戦う人たちで、彼ら自身が指揮を執ることはありません。
 戦時だと予備役召集などで40歳近くの人が来たりすることもありますが、基本的には10代後半から20代あたり、いちばん体力に自信のある年齢層で構成されます。
 この階級になるには、「入隊を志願した」「徴兵で入隊した」の2種類の方法があります。学歴などはあまり考慮されませんが、一般に志願して入るほうが徴兵より格が上とされるようです。
 また、中には、犯罪を犯した者が刑のかわりに強制的に戦場(の最もひどい所)に送り込まれるなんてこともあります。

・下士官
 数人、あるいは十数人の部下を持ち、小規模な戦闘指揮や専門職につく人たちです。視野の広さや総合的な教育の高さでは士官にかないませんが、高い専門技能と経験を持ち、素人の兵士と管理職である士官の間に立って軍隊の中核を担うのはこの階級です。年代的には20代半ば〜40代くらいが目安です。
 下士官になるには、「兵士から昇進した」「学校(高校程度以上)を卒業した後、下士官になるための専門学校に通い、任官した」の2種類があります。ただ、後者は世界設定としてそのような制度が存在しない場合、使うことはできません。
 下士官は、兵士の中でも優れた技能、功績を持つ者から選抜されていきます。なので、下士官をやる場合は、何らかの特技を持っていたりするとそれっぽくなります。

・士官
 軍隊内での指揮、統括、管理、計画立案を主に仕事とする人たちです。言ってみれば第一種国家公務員とでもいった感じで、一般に兵士、下士官とは完全に区別され、エリートとして遇されます。
 この階級になるためには、「士官学校を卒業した」「兵士・下士官から昇進した」「一般大学を出た後専門の研修または学校に行き、任官した(世界設定としてない場合、使うことはできません)」の3種類があります。年代的には、士官学校卒業、一般大学卒業が20代初めから半ば以上、兵や下士官から昇進する場合は30代半ば以上になります。
 大体において、士官の世界では少尉中尉──特に学校出の少尉中尉はぺーぺーに過ぎません。もちろん、兵や下士官に対しては絶大な権威を持ちますが(それでも、ベテラン下士官あたりは陰で若造扱いしてたりします)、このレベルが軍の中枢に関わるということはほとんどありません。大体が、数十人程度の部下を持った前線指揮官、または上位の士官(佐官とか将官とか)に従っての仕事につくことになります。
 艦隊指揮官等、政治もからんだ軍の中枢に関わりたいと思ったら、士官の中でも少将、中将、大将などの将官レベルの階級が必要です。ただ、ここまでいくと、学校出でも年齢的にも40代後半から50代を越えてしまうので、歳を取ったPCはイヤだという人は、少佐以上(年齢的には30代くらい。運がよければ20代後半でなれるかもしれません)あたりの佐官でこれら将官の部下につき、間接的に影響を及ぼすといった技を使うのがいいでしょう。


3.実際のアクションについて

 ここでは、軍事シナリオでのアクションのかけかたについて考えてみます。
 一見難しそうですが、基本的には、競技とか勝負とかの時のアクションとそれほど変わりません。

○どういう条件を満たせば「勝ち」になるのか考える
 戦争における「勝ち」「負け」というのは、単純に死んだ人の数のことではありません。「目標を達成できた」「達成できなかった」という意味です。
「勝ち」あるいは「負け」というのは、戦っているうちに自然に出てくるものではありません。大抵の場合、戦闘を始める前にすでに「こうなったら勝ち」「こうできなかったら負け」という条件が決まっています。これを勝利条件といいます。
 勝利条件というのは、早い話が「戦闘で達成できる目標」のことです。
 どういうのが条件か、というのは、シナリオにもよるので一概には言えませんが、こういった感じであることが多いようです。

・都市、要塞、宝物などを奪う/破壊する
・都市、要塞、宝物などを奪われない/破壊させないで守りきる
・兵士、武器など、敵の戦力を減らす
・司令官を殺す、通信など、重要な設備を破壊する、などをして敵をばらばらにし「組織」として活動できないようにする

 これらが分かっていてアクションをかけるのと、分からないでアクションをかけるのとでは、成功率がだいぶ違います。分かってアクションをかけた場合、個人的な行動には失敗しても、味方全体を勝利に導くことができた、なんてことにもなるかもしれません。
 この「目標」は、大抵の場合、リアクション中のNPCの台詞や地の文、あるいはマスターからのメッセージなどで明記されています。また、文章にはっきり書いていない場合でも、地図でリアクションに出てきた地名をチェックしていくと、「ここを攻めればいい」というようなポイントが見えてくることもあります(地図については後述します)。

○「勝つ」より「負けない」ことが重要
「勝つ」というのは要するに「相手を潰す」ことです。つまり、相手が潰れなければ「勝ち」とは言えない訳です。逆に言えば、相手がいくら殴ってきても、こちらが潰れなければOKなのです。
 それに、「勝つ」つもりでいくということは、防御より攻撃を重視するということになります。ですから、相手が予想外に強かった場合、いきなり負けてしまう可能性が高くなります。その点、「負けない」つもりなら、最初から防御にも力を入れているので、いきなり負ける可能性は低くなります。こちらが負けなければ敵は勝てない……つまり、目標を達成することができなくなるわけですから、総合的に見てこちらの勝ちになるわけです。

 戦闘において、相手は必ずこちらの弱点を狙おうとします。「勝つ」つもりでいる相手ならなおさらのこと、弱点にに大きな圧力をかけて一気に潰そうとします。
 つまり、「負けない」戦闘は、最低限自分たちの弱点を把握し、そこを強化して頑張っていれば、達成可能です。
 弱点が分からなかったら? という心配もあるかもしれませんが、実は、弱点というのはリアクションで結構はっきり書かれるものなのです(もちろん、100%ではありませんから油断は禁物ですが)。ですので、分からなくて対策のたてようがないということはほとんどありません。
 逆に勝ちたい時は、相手を攻める行動に加え、相手がこちらの弱点を突いてきた場合のことも考えなくてはなりません。言ってみれば、攻撃と防御という正反対のことをいちどにやらなくてはならないので、それだけ負担が大きくなります。「攻撃は最大の防御」という良く言われる言葉も、ぶっちゃけた話、正反対のことを考えるのは負担が大きいので、こちらから先に攻め立てて向こうが攻撃してくる余裕をなくしてしまおうという、そういうことです。 

○奇策は愚策。でも、意表をつくのはいいこと
「奇策は愚策」と良く言われます。奇策というのは基本的に、こちらが不利な時に、それを一気に挽回する目的で使われることが多いからです。もともと不利な上に、無理をして一発逆転を狙うわけですから、よっぽど運がいいか指揮官が優秀でなければ成功しません。
 また、別に必要もないのにわざわざそんな作戦をするなんてのは、どう考えても頭の良い方法ではありません。
 ただ、奇策の大部分は「敵の意表をついて混乱させ、その隙に乗じて勝つ」ということを最大の目的にしています。そしてこの「意表をつく」というのは、実は重要なことなのです。
 歴史上の有名な作戦は、大抵、相手の意表をつくことで成功しています。源義経の『鵯越の逆落とし』は、まさかここからは来るまいと平家が思い、手薄にしていた鵯越の崖から義経が攻めかかったのが勝利の鍵でしたし、真珠湾の奇襲も、攻撃部隊の主力を、それまで戦艦や巡洋艦などの支援が役目程度にしか思われていなかった飛行機、そして空母を中心に編成したことが、アメリカ軍に大きな被害を与える結果につながりました。また、ナポレオンに対するロシアの“後退戦術”も、「退くのは向こうが負けているからだ」という思いこみを逆手にとり、ナポレオン軍を消耗戦に引きずり込んで自滅させるのが目的です。

 なぜ意表をつくのがいいのか、それは、相手があわてるからです。
 軍隊の価値は、整然と、統制がとれていればいるほど上がります。「右向け右」といえば全員が一斉に右を向くようなのが良い訳です。
 ですが人間、意表をつかれるとあわてます。あわてた人間は周囲が見えなくなりますし、とっさに理性的な行動も取れなくなります。たとえ「右向け右」と言われても、左を向いてしまったり後ろを向いてしまったり、果てはその場で硬直してしまったりするかもしれません。ここで、軍隊の最大の価値である「整然と、統制がとれた状態」が崩れてしまうのです。
 また、意表をつかれるということは、対抗策を考えていないということでもあります。対抗策がなければ、後はやられっぱなしになるだけです。優れた指揮官なら、とっさにその場しのぎの策を考え出すこともできるでしょうが、悲しいかな、優れた指揮官というのはそうそういるものではありません。
 結果として、相手の意表をつくことが勝利につながるのです。

○地図はやっぱり見たほうがいい
 たとえば、「Aという街の南東にBという河があり、この河は東西に流れているが、Aから20キロ地点で北に曲がっている。この曲がっている地点で、Cという橋が、AとAの北にあるDという街をつないでいる。この中間が次の戦場になる。敵はD街側から攻めてくる」と文章で書かれても、なにがなんだかさっぱり分かりません。はっきり言って、考えるのもイヤです。
 ところが、この文章を見ながら、地図の当てはまる部分にチェックを入れていくと、ものすごくあっさり位置関係が把握できるのです。
 大抵の軍事シナリオには、地図、または地形図がついてきます。女性は一般的に地図を見るのが苦手だそうで、ファイルフォルダのこやしにしている人も多いでしょうが、リアクションで地名が出てきた場合は、引っ張り出してチェックをしてみましょう。現在の敵と自分の位置関係だけでなく、「敵が次に通る街道は谷になっているから、ここで待ち伏せができる」など、次回のアクションのアイディアにもつながります。
 
○戦争でも、不快感を与えるようなアクションは控えましょう
 例えば、街ひとつを住民ごと新型兵器で思いっきり焼き尽くし、降伏しないともっとやるぞとおどしをかければ、相手はびびって言うことを聞くだろう……理屈としては確かにそうです。
 ただ、いくら戦争であっても、やってはいけないことというのはあります。それは論理とか効率とかとはまた別のモラルであり、マナーです。
 どうせ遊びなんだしいいじゃん……現実の戦争はそんなきれいごとは通じない……確かにそうかもしれません。しかし、こういう行為は、ほぼ確実に他のプレイヤーに不快感を与えます。他人に不快感を与えるようなアクションというのは、どんなゲームでも禁止されていますし、それは戦争シナリオといえども例外ではありません。「戦争だから」というのは、言い訳にはならないのです。
 遊びだから、作り事だから、モラルやマナーを守ることもまた大事です。


4.男性プレイヤーとのつきあいかた

 現在でも、軍事シナリオへの参加者の大部分は男性です。ですから、交流などでつきあうプレイヤーも、ほとんどが男性になるかと思います。
 そして、軍事シナリオで男性プレイヤーと交流する場合、他の分野とちょっと違ったコツが必要になります。

 女性プレイヤーの場合、ひとくちに戦争シナリオ参加といっても、その動機はいろいろです。軍人PCがやってみたい、カッコいいNPCがいるから、ちょっと暇があるのでかじってみよう、最近読んだ小説に影響されたから……などなど。
 しかし、男性プレイヤーのほぼ99%は、戦争シナリオに参加する動機はただひとつ、「戦争をやって、そして勝ちたい!」なのです。
 そして大抵の場合、勝つことに夢中になるとどんなことでもやってのけるのが人間です。つまり、軍事シナリオというのは、男性の「もっともイヤな部分」を見る場所であるということは、意識しておいたほうがいいかと思います。
 
 たとえば、男性プレイヤーが主流の軍事シナリオの交流には、こういう傾向が見られます。

・まず自分が主張するのが先。相手を傷つけたり、イヤな思いをさせたりしないための配慮はあまり重要とされていない。
・言いかたが直接的。自分が馬鹿だと思う相手には素直に「馬鹿」と言う。
・「作戦をたてる」「戦況や他プレイヤーの評価分析をする」以外の話題は、基本的に余計なもの扱いされる。ただ、たまに女性NPCの品定め程度はすることがある。
・まず、相手も自分と同等の知識を持っていることを前提にして話をする。なので、知識を持っていなかったり、素人っぽいことを言ったりすると軽視、あるいは馬鹿にされる。
・勝つために他プレイヤーをだましたり、裏切ったりするのが悪いこととされていない。
・たとえ普段いがみあっていても、共通して“異物”と認識する相手に対しては、一致団結連携して攻撃する。

 男性同士では、これらは「普通のつきあい」の範疇に入るようです。ですが、女性にとってこれら多くは「不愉快なこと」になるかと思います。実際、軍事シナリオの掲示板等に女性プレイヤーが混じると、相当のカルチャーショックを受けます。
 もちろん、最近では、女性プレイヤーがいると分かるときちんと気を遣ってくれる男性プレイヤーも多くいます。が、軍事シナリオばかりを渡り歩き、他の分野を経験していないいわゆる自称「軍事専門プレイヤー」などは、何かのはずみでこういった態度に出てくることがあります。
 
 何だかんだ言っても、軍事シナリオはいまだに“男の世界”です。なので、交流の際は男性のルールを尊重することがコツです。特にお勧めできないのが、他のジャンルのシナリオでの交流の形態をそのまま「常識」として相手に押しつけることです。上に書いた「異物認識」を誘発してしまいます。
 ただ、だからといって引いてしまう必要もありません。男性プレイヤーが披露する知識や物の見方は、いろいろな意味でアクションの参考になりますし(何しろ軍事シナリオに参加する男性プレイヤーは、皆勉強しています!)、実は男性にとって、女性プレイヤーの発想というのはなかなかあなどれないもののようです。実際に、男性プレイヤーやマスターの中には「女性プレイヤーのアクションは時々自分たちの意表をついてくるので恐い」という声もあります。
 ですので、上記のような傾向があるということさえ分かっており、それに触れないよう気を付けていれば、基本的には問題なく交流できるはずです。

 もし、なにか不愉快な思いをしたら……セクハラとかは論外ですが、例えば上記リストに当てはまるようなことだった場合、「男性とはこういうものだ」と思って軽く流しておきましょう。これはどちらが悪いというのではなく、男性と女性の基本的な考え方の違いによるものです。ですから「それは間違っている」と反論しても不毛な議論にしかなりません。「自分にとってその発言は気分が良くない」と冷静にやんわり指摘するくらいにしておきましょう。



参考図書:『話を聞かない男、地図が読めない女』アラン&バーバラ・ビーンズ著 主婦の友社


・おまけ・エセ「大物プレイヤー」にご注意

 軍事シナリオに参加する男性プレイヤーの中には、まれに「自分のPC(ひいては自分自身)がシナリオ内で影響力を持つこと」を目的にしている人がいます。
 この人たちは、ゲームそのものを楽しんだり、味方を勝たせたりするのではなく、味方内で自分の権力を誇示し、思うがままに支配したくてプレイしています。しかも、自分ではそのことを自覚していない場合もままあったりします。
 これは女性から見るとなかなか理解しにくい感覚ですが、こういう男性プレイヤーと一緒になった場合は、なるべく関わらないほうが無難です。大抵が高い地位や権力を持ったPCで、一見立派な「主張」や「アドバイス」、または「お願い」をしてきたりすることもありますが、その時は適当にお茶を濁しておきましょう。というのも、こういうプレイヤーは、権力欲は強くても実は実力はあまりなかったりするので、うっかり関わると、逆に困った立場に追い込まれる可能性が高いからです。そもそも、本当に上手な人なら、プレイヤーレベルで他人に支持を要求しなくとも、アクションで権力を握ることができるものです。

 では、この手のプレイヤーと、単に共同アクションをかけたいだけの男性プレイヤーを見分けるには、どうしたらいいでしょうか?
 エセ大物プレイヤーにとって、他のプレイヤーというのは「自分の権勢を拡大するための道具」にすぎません。なので、こちらの都合などお構いなしに、いきなり「○○のために××してはもらえませんか?」あるいは「こちらに○○してほしければ代わりに××してください」と要求を押しつけてきます。
 この時ちょっと巧妙なのは、必ずしもこれが「エセ大物プレイヤーのPCだけ有利になる」行動ではないことです。どちらかというと「戦争を終結させるために」とか「勝利するために」とかの、一見立派な大義が入ります。つまり、彼らはプレイヤーである自分が影響力を持つことが最終目的ですから、自分のPCの有利不利はあまり関係ないのです(ここにだまされる人が多いようです)。
 ただ、「押しつけ」という部分は必ず共通しています。さらに言えば、そこで展開されている論理そのものも、常識的に考えてはてなと思うものがほとんどです。が、それについての疑問や反論を彼らが聞くことはありませんし、かえって逆ギレして「自分は大義のために行動しているのに」とねちねちと責め立ててくることもままあります。
 が、だからといってむげに断ったり反感を見せたりするのも考え物です。こういうプレイヤーにとっての“敵”とは、敵対する側の集団ではなく、味方内で自分に従わない人を指すことが多いからです。なので、表面的には尊敬するそぶりを見せつつ「自分には難しすぎて分からないから」等、やんわりと断っておきましょう。この時、ポイントは自分の“無知”を強調することです。変な話ですが、こういう人たちは、自分より実力がある、自分と対等の立場に立とうとしていると感じた人に対しては極めて敵対的になりますが、自分より下と見なした相手は割と好意的に扱う傾向があるためです。
 もっとも、たまーに「ならばオレ様が鍛えて手下にしてやる」とばかりに、やたらと蘊蓄や知識を語り出すということもありますが……その時は大人しく観念して、嵐が過ぎるのを待ちましょう。見込みがないと思えば、割とあっさり離れていきます。


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