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![]() ARVの概要 ![]() ARVとは「アストロゲーター・ラウンド・バーニアン」の略であり、形や用途がRV(ラウンド・バーニアン)に良く似ていることから地球人が付けたものある。ククトニアン側では「機動兵器」という呼び方が良く使われているが、これが一般的な語なのか専門用語なのかは分かっていない。 ARVは、ARV-A、ARV-Bなどの識別コードの他に、ウグ、ルザルガ等の呼び名がついている。が、これもまた地球側が便宜的につけたいわゆる呼称である。 ただし、ここで使われている単語はいずれも地球では全くなじみのないものであり、地球人が好き勝手につけたというよりは、ククト側の通信を分析し該当するものを推測して当てはめていった可能性も考えられる。 ![]() だが、地球との戦争の際、この特徴は、消耗した機体の補充、パイロットの養成などの面において不利に働いた。策源地に近く、補給などでは断然有利だったはずのククト側が結局互角程度の戦いをすることしかできなかったのも、ARVの専門性が高いがゆえに一旦消耗すると迅速な穴埋めができなかったためと思われる。 そのため、後にはバザム、ディロム、デュラッヘなど、RVを真似た汎用性の高い機種が開発、実戦に投入された。特にディロム、デュラッヘの2機種は性能、構造共によく似ており、パーツの面でも互換性を持っている可能性が高い。 ARVも、比較的地球のRVと似た過程をたどって進化してきた。つまり、作業用の重機が後に兵器に転用されていくというものである。 ただし、地球側のRVの開発に比べればそのスピードはごくゆっくりとした……というか、止まっていると言ってもいいものであった。 そもそも、ククトニアンが異星人の侵略に伴いARV(の原型)を手にしたのは、約3万年前にまで遡る。だが、ククトニアンがARVを真に自分たちの技術として使いこなすようになったのはたかだか1400年前、彼らが核戦争によってコロニーへの移住を余儀なくされた頃のことでしかない。しかも、その後現在に至るまでの進歩と言えば、動力部及び基本性能の上昇、ソフトウェア部分の改良程度であり、100年にも満たない期間でEVA用推進機をRVにまで発展させた地球のペースとはおよそくらべものにならない。 これは一般的には、ククトニアンが平和的な種族であり、兵器としてのARVを発達させる必要を認めなかったからだと言われている。だが、実際にはもっと現実的な理由──技術的な理由と経済的な理由──があったのでないかと推測される。 まず、技術的な理由としては、ククトニアンが手にした時点でARVはすでに完成の域に達しており、特に改良していく必要もなかったのでは、というのがあげられる。 さらに言えば、ARVは、持ち込まれてから28600年間はほとんど放っておかれる状態だった。この間にデータや資料が散逸、消滅し、1400年前にククトニアンがその有用性に気付いた時には「使うことはできるが、どういう技術が使われているかは不明」なものになってしまっていたのではなかろうか。 また、経済的な理由としては、やはり1400年前の核戦争が大きいであろう。ほとんど着の身着のままでコロニーへ逃げ込み、その後も生活の立て直しに汲々としていたククトニアンにとって、莫大な費用と高度な施設を必要とするARVの開発は、ごく最近になるまで難しかったに違いない。 ARVの基本的な構造は、1点をのぞけばRVと変わらない。センサである頭部、コクピットをおさめた胴体部、胴体から両脇に張り出し、柔軟な関節と指によって、目的に応じて自由に器材を持ち換えることができる腕部……とここまではRVとほぼ同じである。 RVとの最も大きな違いは、脚部がなく、可動式のバーニアが胴体に直に取り付けられていたことであろう。現在ではこの特徴が残るのは宇宙専用ARVガッシュのみになっているが、数十年前まで、ARVといえば脚なしが普通であった。 これはやはり、ARVの発達が1400年前頃から始まったことと関係している。 当時、居住可能な三惑星は核汚染され、ククトニアンの居住地はアステロイドに作られたコロニーのみとなっていた。当然、ARVを使う場所として想定されていたのは無重量の宇宙空間のみであり、地面を踏みしめるための脚はいらない。 面白いのは、この時彼らが、脚部も腕部と同じような形にする……つまり、腕を4本という構造にして無重量空間での作業性の向上を図るという方法を採らなかったことである。人類より遙かに長い文明期間を持ち、高い技術を発達させていたククトニアンも、やはり「人間としての基本的な形」への本能的なこだわりは捨てられなかったのだろうか。 なお、現在使用されているARVでは、ウグとズゴッホが最も古いタイプに属する。次いで古いのはドギルム、ガッシュ、ジャーゴで、ククト、クレアド、ベルウィックの調査が始まった2003年(西暦)頃に、地上での使用を目的に新たに開発されたものである。 その後、地球人との衝突から戦争へのあゆみの中でバザム、ドギルム、ルザルガが、開戦後地球側の技術を利用してディロム、デュラッヘ、ウグの次世代バージョンであるギブルが開発された。また、機動兵器同士の地上戦を想定した移動砲台ARV、ディゾもこの時に作られている。 総合的に見た場合、ARVの性能は、RVに比べてお世辞にも良いとは言えない。最新型のディロムやデュラッヘ、ギブルでどうにか互角、それ以外は1対1ではまず勝てないというのが正直なところであろう。しかもこの3機種はククトニアン独自の技術ではなく、地球の技術を“パクって”作られたものである。このあたりに、ククトのARV技術が根本的に貧弱なものであったという現実がうかがえる。 そんな彼らが開戦当初圧倒的な勝利をおさめることができたのは、彼らがRVの回避パターンを知っていたという一例でも分かるように、地球側の情報を綿密に解読、分析し、自らの戦闘システムをそれに最適化させたことによる。そして、その成果を奇襲という最も効果的な形で発揮したのである。そういう意味では、兵器の優劣は必ずしも決定的な勝敗の条件とはならないと言える。 ただし、戦争が長引き、双方持てる限りの物をつぎ込んでの総力戦の様相を呈してくると、兵器の差は戦況にとって無視できない要素となり始めた。そしてついにククトニアンは自ら築き上げてきたARVの歴史を捨て、地球の技術に倣った新しい機動兵器の開発に着手するのである。 果たしてそれが、彼らにとって吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。 付記:ARV各種比較表
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