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ククトニアンの歴史




ククト・地球相関年表

 西暦600年代、地球とククトの技術レベルの差は、およそ1500〜2000年にも及ぶ。
 しかし、実際にククト-地球戦争が始まった西暦2050年代を見ると、その差は約100〜500年程度にまで縮小しており、ある分野ではほぼ同じといってもいいレベルになっている。
 これは、近代から現代における地球の科学技術の加速度的な進歩のせいもあるが、なにより、ククト側で起こった658〜659年のククト、クレアド、ベルウィックで3惑星での核戦争の影響が大きいと思われる。この戦争によりククトでは大規模な資産の喪失、人口の減少、また、その後長期間に渡る技術進歩の停滞が起こったことは想像に難くない。
 つまり、コロニー移住後、ククトニアンは長い間“生きていくだけで精一杯”な状態であり、その間に、着々と進歩を続ける地球の科学技術のレベルとの格差が縮まったのである。

 もともとククトニアンは、闘争を知らない温厚な人種であった。それが核戦争により自らの惑星を居住不可能にしてしまうほどになるのは、約3万年前に起こった異星人種の侵略と混血により、その性質が変化したためである。
 この時、異星人との交雑の結果生まれ、その遺伝形質と文化を受け継いだ子孫が、後に軍国派と便宜的に呼ばれる過激な性向を持つ集団、交雑を嫌って逃亡を繰り返した者たちが、同様にリベラリストと呼ばれる穏健な集団となる。時代が進むにつれ両集団の間でも混血が進行し、遺伝的な差異はほとんど消失したが、それでも軍国派、リベラリストという区分けは現在に至るまで存在する。そして、ククトの歴史は、そのままこのふたつの集団の争いの歴史と言える。

 659年、軍国派とリベラリストの対立は、ついにククト、クレアド、ベルウィック3惑星の核汚染という未曾有の悲劇を招いた。この期に及んでようやく歩み寄りを見せた彼らは、共同でアステロイドに作られたコロニーへと移住、生活の再建に取りかかる。その後約1400年間、ククトでは大きな争いも起こらず、両者の対立は消滅するかと思われた。
 だが、2020年頃、地球人がイプザーロン星系へやってきたのを機に、事態は再び急変する。

 1400年に渡る戦後の停滞期をククトニアンが乗り越え、宇宙へ再び眼を向けるのとほぼ同じ頃、超光速航行を実用化した地球人もイプザーロン星系を発見、探査の手をのばしていた。両人種はお互いに相手の存在を知らないまま、まず第5惑星ベルウィックへの入植を開始する。そして2032年、ついにククトニアンと地球人は遭遇するが、不幸なことにそれはククトニアンを“不法侵入者”と見なした地球人が戦闘をしかけ、これを排除するという形であった。
 その後、幾度か衝突を繰り返しながらベルウィックでの両人種の居住-開発競争は続けられたが、2039年、地球人が惑星上に恒久軍事基地を建設するに及んで、ククトニアンはベルウィックから全面撤退する。当時、ククトの軍事技術は地球のそれに比べて大幅に遅れていたため、彼らとしては、居住可能な惑星はまだクレアド、ククトの2惑星が残っていることでもあり、大きな犠牲を払ってまでベルウィックに固執することはないという結論に達したのである。

 その後、ククトニアンは、失ったベルウィックを埋め合わせる意味でも残り2惑星の探査、入植計画を急ぎ進めることになる。が、クレアドで小規模な移住実験プロジェクトが始まった頃、地球人もまた次の入植地としてクレアドを定め、開発に入ろうとしていた。
 2052年、再び両人種はクレアドで遭遇、戦闘となる。そしてまたここでもククト側は敗北、クレアドをもあきらめざるを得ない事態に陥った。ここに至ってククトニアンの間には深刻な反地球感情が広がり、以後「地球人をイプザーロンから追い出す」ことを国家目標に、ククトでは大規模な軍備拡張計画、対地球人戦争計画が行われることとなる。

 この時、地球人との戦争に反対し、対話による平和的解決を主張したのが、かつてのリベラリストたちであった。だが、すでにコロニーにおいて主流となっていたのは、地球人は武力により排除すべしとする意見であり、それを背景に大きく勢力をのばした軍国派であった。
 彼らはリベラリストを反政府勢力として弾圧、次々と逮捕しては当時作られつつあったククト星の居住実験施設へと送り込む(3惑星の中でいちばん核汚染のひどかったククト星では、居住実験は一般民間人ではなく、犯罪者を使って行われていた)。が、逆にそれはリベラリストに格好の拠点を与えることとなった。軍国派の眼の届かないククトでリベラリストは組織を整え、独自に機動兵器などの技術を開発し、着実に力を蓄えつつあったのである。

 そして2058年、ククト-地球戦争の中で13人の親を捜す子供たちに偶然出会ったリベラリストは、それをきっかけに地球軍と接触、話し合いのテーブルにつくことに成功した。これにより、それまでのククト国家対地球国家の戦争という図式は、ククトニアン軍国派対ククトニアンリベラリスト・地球連合勢力の対決という形に次第に変化していくこととなる。


・備考
 3万年前にククトに侵入した異性人種の出所は、地球である。
 彼らはもともと、船団を組んで宇宙を放浪する民族であった。一時期地球に定住し、彼らと交雑したクロマニヨン人が現在の地球人の祖先となった。この子孫が再び宇宙へ出てイプザーロン星系にたどりつき、当時のククトニアンと交雑した結果出現したのが現ククトニアンである。つまり、ククトニアンと地球人は遺伝的に共通の先祖を持つことになる。

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