寒い習志野

 陸自広報センター(通称りっくんランド)主催の習志野駐屯地見学ツアーに行ってきた。
 集合時間が朝7時10分でちょいと家から行くにはつらい時間なので、昨日は和光市のホテルに前泊。

 しかもホテルの朝食が7時からで結局食べられず、仕方なく行く途中のコンビニでおにぎりを買って、広報センター内のレストスペースで食べる。
 窓の外に見えるのは朝マックならぬ朝戦車。
 さて、習志野駐屯地というと、あの何かというとパラシュートで降りてくる唯一無二の精強部隊、習志野空挺団の基地である。
 当然、見学するのも空挺にちなんだ独特の物ばかりになる。

 まずは跳出訓練塔見学&体験。
 地上11メートルの高さにある航空機の跳び出し口を模した建物で、高さに対する恐怖を克服する訓練に使われる。
 11メートルというのは、人間が最も恐怖を感じる高さなんだそうな。

 原理はアスレチックにある滑車でロープを下るアレ。自分でしがみつくかわりにハーネスにぶら下げられてロープを伝ってくるというだけの代物。
 違うのは、人間がわざわざ塔から飛び出さなくてはならないということ。
 そもそも、航空機からのパラシュート降下を想定した動作訓練なので、ただ「出る」だけでは機体や翼に接触してしまうという根拠がちゃんとあるのだが……。
 これを「体験」するわけですよ。
 つまり自分たちもやるわけですよ。
 地上11メートルから自分の意志で空中に飛びだす滑車ロープを。

 さすがにいきなりやれと言われても素人にはハードルが高すぎるので、まずはレクチャーから。
 迷彩服に着替えるわけにもいかないため、自分の服の上から上着だけ着込んで、その上にハーネスを装着、ヘルメットと首を守るガードをつけることになる。

 次に動作の練習。
 両腕を胸のあたりで組んで顎を胸につけ、前へ飛びだして空中で両足は揃える。
 首はがっちり曲げないと衝撃でむち打ちになったりするらしい。
 でも、そうすると今度は前に飛びだすのが結構難しくなったりする。

 飛びだしたあとは、そのまま滑車で下ってって、土手の所で中の人に回収してもらう。

 人が降りたあと、ハーネスはこうやって中の人が走って跳出塔まで引っ張って帰ってくる。
 これがなんか楽しそうで、ちょっとやりたかった。

 なぜか順番を待つのはひな壇。
 でも寒くてじっとしていられないので、みんなそのうちあちこちうろつき始める。
 結論から言うと、下を見ると相当に恐い。しかも、首を曲げて下を向くので、どうしても下を見てしまう。
 ただ、ハーネスも含めた装備の装着は全部中の人がチェックまで含めてがっちりやってくれるので、絶対に落ちない、大丈夫という安心感はあって、そのために割と簡単に飛びだしていける。
 何しろ、下手なバンジーアトラクションよりも桁違いにサポートの信頼性が高いし。

 これはパラシュートをつけて降下訓練をする設備。さすがに素人は降りるどころか登ることすらできない。
 青空に赤と白がはえてきれい。


 飛びだし体験が終わるとお昼。
 陸自のご飯ははっきり言って微妙なことが多いので内心身構えていたのだが、これは普通においしかった。
 1220カロリー。やっぱり牛乳がついている。
 で、午後に行ったのは梱包訓練見学。
 空挺では落とすのは人だけではない。荷物だろうが武器だろうが資材だろうが車両だろうが、何でもパラシュートをつけて地上にどかどか落としてしまう。
 その時に落とされた物が壊れないような梱包のしかたも、独自の技術のひとつとして確立されている。

 左:火砲を梱包。ハニカム構造の段ボールをクッション材にしている。
 重心を正確に取らないと落とした時にひっくり返ってしまうので、何度も慎重にやりなおししていた。
 右:車両を梱包。ボンネットに積んであるのがパラシュート。
 梱包を見た後は、屋内訓練場へ。
 実際に降下をする前に、降下の時の動作を覚える、というか身体にたたき込む(教官談)所。
 降下は1歩間違えれば死につながるだけに、この課程に必要な訓練時間は何時間、訓練回数は何十回というのが厳密に決められていて、それ以上をこなさないと先に進めない仕組みになっている。
 

 いちばん最初にこの実物大模型で降下の手順と動作を覚える。
 手前がC-1、次に並んでいるのがC-130、いちばん奥で見えにくいのがCH-47を模してある。
 模型じゃなくて実際の機体を使っているのもあった。

 左:黄色いのは巨大扇風機。着地した時にパラシュートが風で煽られる状態を作って対処法を学ぶんだって。
 奥のは何か分からない。
 右:降下の時に持つ物。左から自分の食料とかの荷物30キロ、主パラシュート12キロ、予備パラシュート7キロ(だったか?)。
 さらに武器や自分が担当する機材もプラスされる。

 さらに、着地したりパラシュートを操作したり、細かい動作のひとつひとつを全て地上で徹底的に訓練するようになっている。
 左:着地訓練場(初歩)。怪我をしないよう体重を分散しながら着地するやりかたというのがあって、ここで台から飛び降りながら練習する。
 右:パラシュート操作の訓練場。空挺では大体降下は大人数で行うので、変な動きをして他のパラシュートの動きを妨げたりぶつかったりしないよう、周囲の空気を読みながらの操作を覚える。

 着地訓練(中級)。ハーネスをつけて上の黄色い所から飛び降りて着地する。
 さらにその上には、ロープ降下の訓練設備もある。

 左:ロープ降下の訓練設備の上から。地上10メートルで、午前中に飛んだ跳出塔とほぼ同じ高さ。
 下にいるのは恐らく高所恐怖症と思われる皆さん。
 右:上の写真の着地訓練設備もあんなに下のほうに……。
 このあと、史料館「空挺館」を見て見学は終了。
 空挺ならではの設備とかかなり面白かった。
 広報センターでは時々こういう見学とか、体験搭乗とかのイベントをやっている。
 前は全て直接センターに行って申し込まないとならないマゾ仕様だったが、最近はハガキでの応募も可能になっているので、興味のある人は応募してみるのもいいかも。
 唯一気になったのは、とにかく寒いこと。外はともかく建物の中もなぜか全て寒い。食堂すらも寒い。
 ついでに行き帰りのバスもなぜか全然暖かくならない。
 どんだけストイックなんだ陸自……。
○おまけ

 跳出塔のところにあった、いろんな意味でつっこみどころが多いトイレ。

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