人間様は数年来、ベランダにやってくる鳩との戦いを続けている。
1組の鳩夫婦が、しつこく我が家のベランダに住み着こうとし続けているのだ。
鳩が執念深いというのは本当で、一旦この場所に居着こうと決めたらとことん執着する。鳩は別に嫌いではないが、どんな病気を媒介するか分からない生物に壁1枚隔てて居座られるのは、我が家の鳥どもにとって危険すぎる。
というわけで、人間様も鳩が来る気配を感じる度に脅かして追い払い、鳩よけのテグスを張ったり止まりづらくなるトゲトゲグッズを置いたり、思いつく限りの手段で居着かせまいとしているのだが、奴らはそれらをことごとくくぐり抜けてまたいつの間にかやってくるのだ。1度などエアコンの室外機の下に卵まで産んでいたのを、危うく追い出した事もあった。
もうこれはどちらかの寿命が尽きるまで持久戦しかないのかとここ1年ばかりは考えていたのだが、気付いたら呆気なく戦いは終わっていた模様。
5月の連休に2泊3日で和歌山に遊びに行っていたのだが、留守中に鳩夫婦がベランダをねぐらにしていたらしい。
らしい、というのは、そんな事などつゆ知らぬ人間様が深夜に帰宅し、植木鉢に水をやろうとベランダに続く掃き出し窓を開けた瞬間、ものすごい羽音と共に一目散に逃げ去っていく2羽の鳩が見えたからだ。
たった3日人の気配が消えただけでもうねぐら認定して入り込んでくるその根性もすごいが、闇の中、完全に油断して眠っている所を不意打ちされた恐怖はそれよりもっとすごかったらしい。あれほどしつこかった鳩夫婦が、その日以来今日に至るまで姿を見せていない。
全くそのつもりはなかったけど(というか存在にも気付いてなかったけど)これは完璧なまでに夜襲が決まったということでいいのだろうか。
いつまで効果が続くかは分からないけど。
鳩って都合の悪い事は都合良く忘れるし。