6月4日、5日と戸隠、善光寺に行ってきたので、まとめてアップします。
というわけで、突然思い立って善光寺のご開帳に行ってきた。
これは7年に1度、絶対秘仏(住職ですら見ることを許されない仏像)の本尊に代わり、前立本尊と呼ばれるこちらは絶対じゃないほうの秘仏が公開される行事である。
まあ7年に1度なら割と頻繁に見れる機会は来るのだが、この歳になると7年後には行かれない状況になっている可能性も出てくるので、じゃあ行ってこようかとなった次第。
ただこのご開帳、めちゃくちゃ混むらしい。
善光寺のサイトで参拝や御朱印授与の混雑状況を見ることができるのだが、内陣参拝という本堂内部での有料の参拝に100分以上待ちとか、御朱印もらうのに90分待ちとか、一体どこのディズニーランドだと思うような事になっている。
一方で、善光寺は境内に入って参拝するだけなら24時間OK。本堂も、内陣ではなく外陣という仏像から遠いエリア(ちゃんと仏像は見える)までなら無料で入ることができる。
そして実は有料エリアの拝観開始時間がめちゃくちゃ早い。これは「お朝事」という早朝法要を一般に公開している関係からなのだが、朝の5時とか6時とかにはもう見ることができる(なお終了時間も20時とかの所がある)。
つまり、1泊して夜とか翌日の早朝とかに行けば、激混みを避けてうまいこと参拝できる可能性が高いのだ。
では善光寺はそうするとして、1日目の日中はどうしようか。折角行くのだから1日遊びたい。
という事で思いついたのが戸隠神社。
戸隠五社と言われ、標高が高い順に奥社、九頭龍社、中社、火之御子社、宝光社をまとめて参拝するのが一般的。
JR長野駅から戸隠まで、バスでおよそ1時間。一番遠い奥社だと標高1300メートルを一気に登っていく事になる。
途中の停留所には高原やらスキー場やらが出てきて、なんかものすごい所に来ちゃってるなという感じ。
そしてそんな所にまでバスで来れてしまう現代文明のありがたさ。
今回は一番上の奥社から順に降りてくることにした。
戸隠奥社は広い原生林の神域を持っており、参拝するにはその中に設けられた山道もとい参道を1時間ほど登っていかないとたどり着けない。
下りなのは最初の数十メートルだけ。後はずっと上り坂か階段が続く。
しかし周囲はこんな感じの原生林で、歩いていて気持ちが良い。
実はこのあたりの山の樹木は、植林された杉が大部分で、そういう意味ではあまり面白みのない植生なのだが、神域として守られてきたここは別。
しかも水が非常に豊富で、至る所に湿地や池、小川があり、鳥やハルゼミ、カエルが鳴きまくっている。
人がひっきりなしに訪れる場所なのに、人と自然の距離がとても近い。
山門。元々奥社は仏教寺院だったため、こういう形式らしい。両脇にはセオリー通り仁王様も配置されていたが、明治に寺院は廃されて他の場所に移され、門だけが残った。
それはともかくとして藁葺き屋根がすごいことになってるな。
山門を過ぎると見事な杉並木。樹齢は400年ほどとか。
これも仏教寺院だった頃にに寄進されたもの。
前にJR東日本のCMで、吉永小百合が入ってた木のうろ。
今は入るの禁止。
そして段々きつくなる勾配。最後は階段になった。
まあ慣れていればサンダルやヒールやペタンコ靴で行けないこともないけど、こういうきちんとした階段ばかりではなくて、途中で自然石を適当に並べただけのヤンチャな物になったりするから、覚悟はしたほうがいいと思う。
そして人間様ももはや恒例の膝をやられた。
ようやく着いた……と思ったら最初に感じた嫌な予感が的中。
めちゃくちゃ並んでいて30分ぐらい待たされた。
この後御朱印をもらうのにもまた30分ほどかかり、予定していた時刻の中社行きのバスに乗れなくなる。
奥社。裏に岩山を背負って建っている。
祀られているのは天岩戸をこじ開けた天手力雄命。その脳筋もとい伝説にあやかってスポーツの神様として信仰を集めているらしい。
奥社からちょっと下がったところにある九頭龍社。
こちらは元々の土着の水の神が、日本神話の神と並んで祀られたもの。
よく見ると、右側に上に伸びる渡り廊下が続いていて、人目につかない奥の方にもうひとつひっそりと社殿がある。
これ何なのか聞きたかったけれど、神職の人達も大忙しだったので聞けずじまいだった。
そしてまだ桜が咲いていた。
今年はずいぶん長く桜が見られたなー。
野生のシャクヤク?
あと1日遅ければ咲いてたのが見られたかな。
先を行く人達が急に騒ぎ始めたから何かと思ったら、なんとカルガモの親子が道の脇の草むらを歩いてきていた。
カルガモの引っ越しだ! 生引っ越しだ! 初めて見た!
口々にピーピー鳴きながら、一生懸命下生えをくぐったり乗り越えたりして母鳥を追うヒナたち。
かわいい……。
実はこういうヒヨコが、まだちゃんとした翼になる前のオマケでついてる腕みたいなのをいっちょまえに広げたりぱたぱたさせたりする仕草が大好きなんだけど、分かってもらえるかな……。
大喜びでカメラを向ける人間達を警戒しつつ、一休みする母鳥。
多分、この先に点在する沼か池のひとつに行こうとしているのだと思う。
人間が集まってきても奥に逃げ込まずにいるということは、この母鳥は以前もこれを経験していて、何もされないという事を分かっているのかもしれない。
とりあえず、大量に写真を撮ったのだが、興奮していたせいか、この3枚以外ほぼ見れたもんじゃない出来になっていたのが痛恨のミス。
そんなカルガモの余韻にひたりながら、バスに乗ってひとつ下の中社へ向かう。
実は戸隠五社は歩こうと思えば全行程歩ける。
自然に富んだ風光明媚なこのあたりは、体力に応じてトライできるハイキングコースが何種類も整備されており、五社を回るコースもその中に入っている。
なので、最初は歩く事も考えたのだが、奥社で参拝と御朱印に必要以上に時間を取られたことから、他でも同じ事になる可能性が高いと考えて断念したのだった。
無理して行って終バスに乗れなかったりしたら大変だしね。
もっとも、中社から火之御子社は中社から歩いて15分、宝光社は火之御子社から15分。1時間に1本のバスを待つより歩いた方が早い場合も多い。
どうにかこうにかお参りを済ませ、やっぱりバスの時間が悪かったので火之御子社まで歩くことにする。
中社から火之御子社を経て宝光社に下っていく徒歩ルートは、特に神道(かんみち)と呼ばれている。
途中までは一般住宅地を通り抜けていくので普通に舗装された道路だが、途中からこんな感じの山道に変わる。
ここもハルゼミやカエルや野鳥の声がしていていい感じ。たまにクマが出るみたいだけど。
クマといえば、奥社へ歩いていく時に、近くでクマ鈴をリンリン響かせてる女の子がいて非常に迷惑だった。
これだけ人が多い所にクマなんてまず出ないし、実はクマ鈴の音は意外と大音量な上に、人間にとっても割と不快なレベルの高音域なので、近くでやられると耳に刺さるし周囲の自然の音がかき消されてしまう。
あまり続けるようだったら声をかけよう思ったけど、ほどなくして誰かから言われたのか、やっている事の意味のなさに遅まきながら気付いたのか止めていた。
ほんとクマ鈴をファッション感覚でつけるのやめてほしい。
そして火之御子社へ……と思ったらなんとここは宝光社だった。
どうやら途中で火之御子社へ向かう脇道を見逃してそのまま進んでしまったらしい。
さすがに倍の時間歩いているのにおかしいと思わないのはどうなのかと自分でも思ったが、どうせなら全部お参りしたいので全速力(ただし歩き)で火之御子社まで戻る事にした。
が、来るとき下りだったという事は、戻る時には登りになるという事にもなる。なんというか、もう音を上げたい気持ちになりながらお参りを済ませてまた宝光社まで戻り、5社をコンプリートしたのだった。
さあ帰ろう。
バスに乗ってまた1時間揺られて長野駅に戻ってきた。
奥社と中社で予想以上に時間を取られてスケジュールが狂ったが、火之御子社と宝光社へ行くのにバスを待つのではなく歩きを選んだことが、間違いを含めても大幅な時間短縮になったらしく、最終的に帳尻は合って当初予定していた帰りのバスにちゃんと乗れた。
で、長野駅についた時には17時過ぎ。
よしこのまま善光寺に行こう。
明日の下見だ。
長野駅から善光寺までは歩いて30分ほど。だらだら坂を上がっていく事になるが、店の連なる大通りなのでそれほど苦ではない。
そろそろ夕暮れが近い仁王門。
さすがに帰る人の姿が目立つが、これから行く人も一定数いる。
やっぱり無料の場所だけでいいので、混雑を避けてお参りしたいという人が多いのだろうか。
前立て本尊そのものは夕方には厨子を閉じてしまうので見れないが、本堂の無料エリアには普通に夜でも入れるし、お守りとかを売っている授与所も御朱印を書くところも20時までは開いているし、日帰りや団体のいないこの時間帯の方がむしろゆっくりできるのは確か。
参拝時間によって御利益が変わるわけではないしね。
仁王門の次にある山門は、上に上がれるようになっている。
夕方の長野市街。
転落防止のネットが一緒に写っちゃってるのはご愛敬。
山門から本堂の方角。
人が並んでいる白木の柱は「回向柱」と言って、ご開帳中に設置される。
この柱からは紐が伸びていて、その紐は最終的に今回ご開帳される前立観音の指に結ばれている。
そのため、柱に触るとそのまま前立観音に自分の思いを伝える事ができる、というもの。
人間様が来たときにはこの半分ぐらいの人しかいなかったんだけど、その後次第に行列が伸びてきている。
やっぱり皆さん昼間の地獄の待ち時間をかわしたいという思いは同じらしい。
日も落ちてそろそろ暗くなってきた。これはこれで風情があっていい眺め。
御朱印も30分待ちぐらいでもらえたし、どこかでご飯を食べてホテルに戻ろうか。