雨降る日光

 日光に来ている。
 たまには秋と冬以外の季節も来てみようかなと思っただけなのだが、ついでに前から興味があった日光白根山に登ることにした。
 ……が、予定日が全部雨予報なので早々に断念した。
 奥日光って梅雨がないんじゃなかったの? ねえ。


 東武日光駅に着いた時点で雨がぱらついている。
 今回は日光白根山以外に、中禅寺湖の千手が浜も行きたかったのだが、ここも自然探索路を歩くので雨だといささか行きにくい。
 日光は箱根みたいに雨天の時に駆け込める施設や設備がないのが弱点なんだよな。
 まあ1日温泉入ってればいいじゃんって話もあるけど。

 というわけで、前からちょっと興味があった日光植物園に立ち寄ってみる事にした。

 この植物園はあの小石川植物園の分園で、東京大学が植物学の研究や教育のために使っている。
 田母沢御用邸のすぐ隣で、バスもほぼ前(100メートルほど歩く)に止まるので、ロケーションとしては行きやすい。


 ただ、あくまでも研究施設で、娯楽向けでは全くないのが難と言えば難。
 ここは森林限界より上に生息する高山植物を集めたロックガーデン。

 うーん、植物の種類は豊富なので楽しいには楽しいのだが、今日来るべきところではなかった感がある。
 気温28度で蒸し暑いし雨はぱらつくし、おまけにこの天気だとヤマビルが大変元気になるそうで、用意された虫除けをたっぷりつけて絶対道からはずれないようにとスタッフの人から念を押された。
 もうちょっと条件のいい時に出直した方が良さそうだな……。


 雰囲気はすごくいいんだけれど。

 というわけでちょっとしょんぼりしながら、とりあえず中禅寺湖まで上がることにする。
 現地の天気次第で千手が浜か遊覧船かどっちかを選択しようと思ったのだが、着いてみたら困ったことにどっちもいけそうな雰囲気。


 でも結局遊覧船にした。
 良く考えたら、遊覧船が運航している季節に来たのはこれが初めてだった。
 だったら乗らないとなるまい。先日軍港めぐりに乗ったばかりだけど。


 中禅寺湖遊覧船は、1隻の船が3カ所の乗降場所を1周55分で巡回するコースで運行している。
 段々と近づいてくる船を乗船所からぼんやり眺めているのもまた楽しい。


 着いた!
 さあ乗るぞ。


 天気は悪いけど、気温は低いし風も冷たいので快適。


 湖上から眺める男体山も、いつもとちょっと違う形。
 富士山みたいななだらかな成層火山かと思ってたけど、実は頂上結構ひらべったいんだ。


 日光を開いた勝道上人と天海の遺骨が葬られているという島。


 右の方にちょこっと出ている白い雲のあたりが、中禅寺湖が華厳の滝に落ちるあたり。
 華厳の滝を通路に上がってきた暖かい空気と、中禅寺湖の冷たい空気がぶつかって雲になるんだそうな。


 アップにすると爆発でも起こってそうだが、雲。


 なんか半島。


 ここで雲が切れてあたりが明るくなってきた。
 水の色が深い緑でとてもきれい。


 立木観音に到着。
 ここで一旦降りてお参りして、また乗って元のところに帰ってきた。

 面白かった。
 やっぱり、陸上とは違う風景を見られるというだけでもう楽しい。

 この後は買い物をしたり、これまでお手洗いを借りたことしかなかった日光博物館を見たりしていたら、そろそろいい時間になってきたので、いつもの湯元に向かうことにする。


 バスターミナルで子ツバメが親からエサもらってた。


 途中で三本松から戦場ヶ原を眺める事にする。
 やっぱり緑の季節だとだいぶ雰囲気が変わるな。


 今気づいたけど、湿原って英語ではムーア(Moor)なのね。
 ムーアというと、秘密の花園のムーア(荒野)のイメージが強いけど。

 しばらく遊んで満足したので、またバスに乗って湯元に到着。
 いつものコースで温泉寺から源泉を散歩していたら……。


 鹿の家族がいる!


 袋角が生えたオス。
 まあ多分何かいるだろうと思ってはいたが、結構堂々と出てきていた。


 こっちはきっとメス。
 これよりもうちょっと小柄なのがいたから、それが子供じゃないかな。

 こっちが物音を立てると一応ぱっと見るのだが、見るだけでまた草を食べに戻ってしまう。
 完全に分かっていて存在を無視している。
 ここの鹿は奈良とかとはまた違った意味で人慣れしてるからな……。


 カモの親子もいた。
 ヒナはもうほとんど親と同じ大きさと模様になっている。


 でもヒナたちがエサを食べている間、お母さんはあたりをじっと監視している。
 仁王立ちでカメラを警戒するお母さんと、無造作にその前を横切っていくヒナの無頓着っぷりの差よ。


 ヒナたちを先に行かせて撤収。

 思いがけず鹿とカモを堪能したので満足したが、一方、源泉には小学生が大量にあふれていた。
 その場にいるだけで数十人、みんな源泉を触って大騒ぎしている。
 そしてさらに追加が来るらしく、「鹿だー!」「鹿がいるー!」「すげー!」という興奮しきった叫びが向こうの方から聞こえてくる(多分さっきの鹿一家がまだいた)。
 そういえば小学校の修学旅行で源泉まで来たわ。さすがに泊まらなかったけど。
 そしてやっぱり源泉触って喜んでたわ。
 うん、君たちは数十年前の私なんだね。
 楽しんでいい思い出を未来に持っておいき。

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