法王様ご出奔

「ローマ法王の休日」を見てきた。
 法王ではなく、「ローマ枢機卿の休日」だなこれは。
 予告やサイトだと、選ばれたはいいが内気なゆえにプレッシャーに押しつぶされてしまった新法王が、市井の人々との触れあいで自分が進むべき道を次第に見出して……という風に見える。
 まあそれは間違ってないんだけど、そこから導かれる良くある展開を想像していると完全に意表をつかれる。というか、「えっそこで終わり?」的に呆気に取られる。
 実際、エンドタイトルが始まっても、観客全員ポカーンとしてたし。
 何というか、映画としては悪くないとは思う。
 コンクラーベでローマ法王という嫌な役目を大人しくて謙虚な主人公メルヴィルに押しつけ、お気楽に過ごす枢機卿たちと、自分が法王にふさわしいのかひとりまじめに孤独に悩み続けるメルヴィルの対比、「神に選ばれた」と言いつつ、結局は人間同士のエゴと自己都合の押し付け合いでしかない法王選出と、なまじ誠実であるがゆえにそれに石を投げつけることになってしまうメルヴィルという展開は、エスプリが効いていて面白い。
 ただ、ラストに余韻がなさすぎることもあって、カトリック信者でないと、この映画の意味は分からないし、何がショッキングなのかも理解できないと思う。
 あと、実際には全然違う物語(むしろラストは重い)なのに、「ローマの休日」にイメージを重ねてくる宣伝の仕方があざとすぎて、かなり印象が悪くなっているのがもったいない。
 意図してやっているなら悪質だし、分かってなかったのなら宣伝担当は相当頭が悪いと思う。
 というかこの監督、いちばん撮りたかったのは枢機卿のバレーボール大会じゃないかと思うんだ。
 ところで、枢機卿ってなんで全員、でかい宝石つけたキンキラの指輪してるの?

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