この鳥も朝起こすと時々カゴの隅に貼り付いている。

　…………。
　マメルリハって貼り付くのが好きなの？

　無邪気な顔。
　前は手を見ると後ろ跳びにすっとんで逃げていたチャンドラだが、パムやビビやブロッサム、通称ちびころやぎっくちゃんが平気で手に乗ったり遊んだりしているのを見るうちに、どうやらそれほど恐がらなくても良さそうだと思い始めたらしい。
　最近では、カゴの中に指を入れると、恐る恐る寄ってきて試し噛みをしてくるようになった。
　でも試すのはいいのだが、じわじわと少しずつ力を入れながら噛んでくるのがちょっとやな感じ。

　なにやらカゴの天井近くでごそごそやっているチャンドラ。
　どうやら金網につかまったまま片足になってくつろごうとしているらしい。

　まずポジションを決めて……。

　安定させたら足をそっと離して……。

　そーっとお腹の中へ。

　…………。

　おっと！
　……人間様はお前のことがまだ良く分かってる訳じゃないけどさ。
　それはちょっと無理なんじゃないかと思うよ。

　チャンドラの隔離がようやく終了。

　おそと！
　外がはっきり見えるようになったのがチャンドラなりに嬉しいらしく、しじゅうこうやって眺めている。
　買った時に28グラムで、ちょっと痩せてると言われた体重も30グラムまで増加した。
　食欲旺盛なのはいいことだが、34グラム以上に増えるとデブ宣言されるからやめてね。

　ビニール越しに見上げてくるチャンドラ。

　こういうちょっと何か言いたげな顔を見ると手乗りっぽいんだけどねえ。
　実は慣れてないんだよね。
　でも実際のところ、親鳥に育てられたという割には、チャンドラは人慣れしているほうらしい。
　病院の先生も、この調子ならそのちビビやパムと一緒に外で遊ばせたりできるようになるかもしれないと言っている。
　うーん、パラダイス。

　恐らく、最初は偶然だったのだろう。
　だが、その偶然に対して彼がふと抱いた興味は、そのまま彼を悪の世界へと誘うのに充分なものだった……。

　あっ、こら！

「？」
　出しても出しても、水入れにキャットボールをつっこんでしまうチャンドラ。
　つっこむだけでなく、中でボールをコロコロ回して遊ぶので、まわり中に水が飛び散ってしまっている。
　まあ、お前が飲む水だからいいけどね。
　どうしてそう悪いことばかり考えつくのかね、この子は。

　家に帰ったら、床を跳ね回りながらキャットボールを楽しそうに振り回し、叩きつけて遊んでいるチャンドラがいた……。

　えいっ！
　……まあ、気に入ってもらえて良かったよ。
　というか、もしかしてこの鳥、実は相当乱暴者なんじゃ……。

　相変わらずカゴをくちばしでガタガタ鳴らす遊びをやめないチャンドラ。
　そんなに音を立てたいのなら、人間様が迷惑でない音の出るオモチャをやろうと、キャットボールを入れてやった。

　ころりん。

　びくっ！
　藁オモチャは入れるとすぐお気に入りになったのに、キャットボールはなんだか不評のようで、逃げ回って近寄ろうとしない。
　それでも気にはなるらしく、時間がたつにつれて、逃げ腰になりながらも精一杯くちばしをのばして触ってみたりしている。

　今日はチャンドラの2回目の経過確認。
　フンからメガバクテリアは出なくなったが、まだ体内に残っている可能性があるので、もう3週間投薬を続けて終了ということになった。

　まだもうちょっと隔離だね。
　ところで、若干チャンドラの鼻が詰まり気味だったので、先生が薬をつけてきれいにしてくれた。
　この薬が、鳥の鼻呼吸に合わせて鼻の穴に1滴たらし、鳥に吸い込ませるというものなのだが、先生につかまれている間中ずっと口を開けて威嚇し続けているチャンドラは、たらされた薬をいつまでたっても吸い込んでくれない。
　そこで先生がくちばしを指でつまんで閉じてみたら、途端に鼻の上の薬がすすすすす、と穴に吸い込まれていった。
　コント見てるみたいで笑いが止まりませんでした。

　……なにそのなんだか閉じこめられてるっぽい格好。

　…………。
　隔離用ビニールが汚れて曇ってしまったのが不満らしく、囓って隙間を開けて外を除いている。
　ビニール代えてやるからそういう切ない真似やめてよ。