ピリカを外に出して遊ばせながら人間様はゲームをしていたのだが、気付けば構ってもらえないのが不満なようで、じっと止まったまま動かなくなっていた。
ぶれているのは手ブレで、ピリカ本人はぴくりともしていない。
しばらく眺めていたら動き出したけど、何を考えていたんだろう?
とりあえず、ケースの外では人間様にひっつくのが安全だと思っているらしいピリカ。
ところで、ピリカは自分がケースの中にいる時に人間様が視界から消えると呼び鳴きを始めるのだが、状況によって2種類の鳴き方を使い分けているらしい。
例えば風呂やトイレなどで人間様が完全に部屋を離れ、音も気配も感じられなくなった場合、ピヨーピヨーという澄んだすがるような甲高い声で呼んでくる。
一方、隣の台所で料理をしていたり等、音や気配はちゃんとするのに姿だけが見えないような時は、ビョービョーとなんだか低い濁った声になる。
……もしかすると、わざわざ低い声で呼ぶのは、隠れてないでとっとと出てこいとでもいうつもりなのだろうか?
2週間ほど前からピリカの鼻のあたりが少し膨らんで、分泌物(有り体に言えば鼻くそ)っぽい物をつけていたりしたので、病院に連れて行くことにした。
鼻に分泌物が詰まって固まってしまう事がヒメウズラにはあるらしい。まあ放っといても健康に別状はないみたいなのだが、やっぱり気になる。
ただ、病院に連れていく場合、ヒメウズラはひとつ問題があった。
彼らは驚いたり興奮したりするとジャンプするのである。
マメルリハどもを運搬する時に使っているプラケースでは、頭をぶつけてしまう可能性がある。死ぬような事はないだろうが、やっと治ってきたハゲがまた復活するのはちょっと避けたい。
ということで、どうしたらいいかと考えた挙げ句、プラケースには蓋をつけず、代わりに洗濯ネットに入れることにした。
そんなわけで、ブラジャー用の洗濯ネットに入れられたピリカとプラケース。
……笑ってはいけない。
我ながら少々神経質な気がしたが、病院に着いて運搬用のバッグを開けた途端、ボン! と結構派手な音を立てて洗濯ネットに頭をぶつけてきたので、結果として用心して正解だった。
結論から言うと、ピリカの鼻には何も詰まっていなかった。
恐らく、何かにぶつけて腫れているのではないかということで、しばらくは様子を見る事になった。さらに腫れたり膿んできたりしたらまた病院送りになるが、本人は特に痛がる様子もないので、恐らく大丈夫なのではないかと思う。
ピリカを連れての外出は初めてだったので少し心配だったが、パニックを起こすこともなく落ち着いていたのでほっとした。
病室でもほとんど暴れず先生に診てもらっていたし、診察が終わってケースに戻されたらあからさまに好奇心満々の顔でまわりを眺めていたりして、インコよりむしろ扱いやすかったかもしれない。
もちろん、ピリカが手乗りで普段から人に掴まれる事に慣れているからというのはあるのだろうが。
でも、待合室で構って欲しくなって雄叫びを始めるのは恥ずかしいのでやめて欲しい。