朝の善光寺昼のバラ園

 6月4日、5日と戸隠、善光寺に行ってきたので、まとめてアップします。

 善光寺は毎朝「お朝事(おあさじ)」という本堂で行う早朝法要を一般に公開している。
 開始は季節にもよるが、大体は5時半から6時ぐらい。今の季節は5時半。ご開帳期間はこのお朝事の時に前立観音の厨子の扉が開かれ、夕方の法要の時に閉じられる。これがなかなか面白いそうで、ちょっと見たくなった。
 お朝事そのものは誰でも見られる。見る方法には2種類あって、本堂の無料エリアである外陣から立ち見をするか、拝観料を払ってより良い場所である畳敷きの内陣に座って見るか、どちらかを選択できる。
 が、当然ながら、有料エリアの方が条件がいいので競争率が高い。
 でも折角来たからには、有料エリアできっちり見たい。
 なので朝4時に起きて頑張った。


 ホテルから善光寺まで歩いて30分。定員ギリギリで内陣に滑り込むことができた。
 あっぶな、歩いてくる時に数人追い越していなかったら、入れなかったかもしれない。

 とはいえ座る場所がなくて脇の方で立ち見だったけれど、座っても恐らく最後列、そうなると前の人に遮られて見えない可能性が高かったので、脇と言っても前列に近い場所でゆっくり見られて好きな時に立ったり座ったりストレッチしたりできる(座る席は畳に正座とか横座りとかあぐらとか。しかも窮屈)、さらに、すぐ近くで待機している係員のおじさんが、見どころや次にどうなるかを何かと教えてくれる、結果として大変お得な場所だった。

 お朝事も含めて本堂内は撮影行為一切禁止なので、ここにアップできないのが残念だが、なかなか面白かった。
 特にご開帳。
 少し高い位置にある閉じられたきらびやかな緞帳が、住職が近づいていくに連れて少しずつ上がっていく。完全に上がりきったところで住職が恭しく両手を伸ばし、緞帳の奥にある厨子の扉を開く。するとその瞬間、それまで暗かった厨子の内部がぱぁっとまばゆくライトアップされて内装の金張りが光り輝き、前立観音の姿がくっきりと浮かび上がる(ここで参拝客からどよめきが上がる)。ラストはその光に照らされた住職が、今度は堂々と胸を張って厨子から離れて去っていく……とか、すごく盛り上げ方が計算されていて、さすが数百年ご開帳を繰返してきた歴史は伊達ではないなと感心した。

 そんなわけで、6時半頃に無事にお朝事を終えて前立て観音も参拝し、その後は昨日は時間外で入れなかった有料エリアの拝観をして、善光寺の境内にある大勧進、大本願というふたつのお寺も回っていく。
 やっぱり朝早いと行列も短くて(行列していない訳ではない)すごく楽。


 戊辰戦争から太平洋戦争までの戦死者を祀る忠霊塔。


 回向柱はみるみるうちに行列が長くなっていく。
 この30分ぐらい後に見たら、仁王門を過ぎてさらにどんどん伸びていた。
 つくづく昨日のうちに触っておいて良かった。


 大勧進。ここにも回向柱がある。
 大勧進と大本願の住職は、善光寺の住職でもある。
 仏教がいろいろな宗派に分かれる前に成立した善光寺は無宗派の寺だが、いろいろ紆余曲折あって、現在は天台宗と浄土宗が共同で管理をしている。
 その関係で、大勧進(天台宗)と大本願(浄土宗)というふたつの寺が境内に置かれ、そこの住職が善光寺の住職も兼任する形になっている。
 ちなみに、善光寺ではお朝事を含めた各法要も、全て天台宗と浄土宗両方のやり方でやっている。
 お坊さん達が、天台宗の般若心経の次に浄土宗の阿弥陀経を唱え出すのを見るのはなかなかシュール。


 大本願では「鷹司敦子コレクション 対象ロマンの絵封筒」展をやっていた。
 現住職の母で華族の鷹司敦子が大正から昭和にかけて集めた絵封筒ということなのだが、やっぱり華族のお嬢様が集めるものだからセンスの良さが光っている。
 しかも結構な数があって、その気になればいつまでも見ていてられる。
 ついついグッズまで買ってしまった。



 本堂横には庭園がある。
 地味スポットなのでほとんど人がおらず、存分に散策を楽しめる。
 人にまみれた後一息いれるのに丁度いい。


 ……お前達本当に日なたに寝転ぶのが好きだな。

 と、こんな感じで境内のめぼしい場所はほぼ回って本日の予定を終了したのだが、それでも時刻はまだ9時過ぎ。
 実は、日曜日だしいろいろと行列するだろうと思って、帰りの列車の時間を17時にしてあったのだが、ここまでスムーズすぎて時間が大幅に余りすぎている。困った。
 今回はフリーツアーできているので列車の変更はできないし、仕方ないから観光案内所でどこか良い所がないか聞いてみよう。

 ということで勧められたのが、長野電鉄という私鉄に乗って1時間ほどの、中野松川という場所で開かれているバラ公園のバラ祭りを見るというコース。
 なんでも、3000株にも及ぶバラが丁度見頃を迎えているらしい。なにそれすごい。
 こういうお勧めでもなければ絶対行かないだろうし、良さそう。行ってみよう。



 善光寺からの最寄り駅にやってきたが、何というかこう、レトロというか寒々しいというか、独特の雰囲気のホームになんか不安になる。
 そしてその不安は、どこかで見たような、でもここにはありない電車がホームに入ってきたときにますます強くなった。
 このままきさらぎ駅とかに連れて行かれそう。


 当然ながらそんな事は全くなくて、雄大な山の風景などを楽しみながら中野松川へ向かう。
 こういう予定外の旅も面白いよね。


 そしてこれが乗ってきた電車。
 成田エクスプレス! 成田エクスプレスじゃないか! どうしてこんな所に!

 後で調べたら、長野電鉄は他社の中古車両を積極的に導入していて、それを使ったキャンペーンなども行っているらしい。
 全然知らなかった。
 地方ローカル私鉄の駅に突然これが入ってきたからほんとびっくりした。


 駅から5分ほど歩いて、バラ公園に到着。
 正式名称は「一本木公園」。30年ほど前に収集家の人が179種のバラを寄贈した事に始まり、その後は有志がコツコツと株を増やして今に至る。
 門のあたりですでにバラの香りがかすかに漂ってくる。


 これはすごい。
 広い園内がバラに埋め尽くされている。
 ありとあらゆる種類のバラが、路地植え、庭園、あずまや、回廊、壁面など、様々な形に仕立てられている。しかもどれも手入れが行き届いている。
 そろそろ盛りを過ぎて散り始めているのも散見されるが、これは確かにおすすめするだけのことはあるわ。
 しかもここ、無料。大事な事だからもう1度言うよ、無料。


 構成もなかなか巧みで、かなりの人がいるのにあまりそういう気がしない。



 ただバラに囲まれ、バラを眺めて時間を過ごす。
 この上なく贅沢な気分になるが、難を言えば日差しがじりじりしてとっても暑い。

 いやーこれは楽しかった。堪能した。
 さてまた電車に乗って長野に戻ろう。


 来た。
 ……小田急ロマンスカー! 小田急ロマンスカーじゃないか! どうしてこんな所に!

 本家では完全に見られなくなった古い車両がやってきたので、またびっくりした。


 そして長野駅ではロマンスカーと成田エクスプレスが並んで停車するというシュールな光景ができていた。


 その隣の普通電車の車両。
 これもどこかで見たと思ったら、地下鉄日比谷線だった。
 やばい長野電鉄ものすごく楽しい。
 これ絶対また来よう。

 面白かったなあ。
 戸隠は今度はハイキングしたいし、どうせ大混雑しているだろうと見送った小布施あたりもちょっと興味がある。
 また来よう。

○おまけ


 便乗するにも程がある。
 買ったけど。

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